プール

水質

学校のプールは児童生徒が多人数で利用することから、遊泳者により病原体が持ち込まれやすく、また、全身がプール水に触れるため、感染症が集団的に発生するおそれがあります。

これらの未然防止のためにも、プール水の衛生管理は重要となります。

プール原水に関する留意事項

プールの原水は、飲料水の基準に適合するものであることが望ましい。

飲料水に供していない井戸水、河川水、 湖沼水等を用いる場合は、プール使用開始前に水質検査を行い、
「第 2 飲料水等の水質及び 施設・設備に係る学校環境衛生基準」の「(2) 専用水道に該当しない井戸水等を水源とする飲 料水の水質」で求められている検査項目の基準を満たすよう努める必要があります。

(1)遊離残留塩素

プールの消毒管理の指標であり、細菌やウイルス等のプールで感染する可能性のある病原体に対して消毒効果を得るためには、 0.4 mg/L 以上が必要とされています。

プール水中の遊離残留塩素は、日光の紫外線による分解や入泳者の持ち込む 汚れ、毛髪・水着等により絶えず消費されることから、塩素剤を投入し、一定濃度以上を維持する必要があります。

検査回数
使用日の積算が30日以内ごとに1回
基準
0.4 mg/L 以上であること。
また、1.0 mg/L 以下であることが望ましい。

事後措置

・0.4mg/Lを下回った場合には遊泳を一時中止する。

・塩素剤を投入し、基準値の範囲内を維持する

・遊離残留塩素濃度が均一にならない場合、液体や顆粒の塩素剤を散布したり、錠剤の塩素剤を入れたりして基準値以上に保つ。
塩素安定剤は、紫外線による遊離残留塩素の消費を減少させ、均一性をよくすることから、その使用も検討する。

・塩素剤を注入しても遊離残留塩素が検出されない場合は、循環ろ過装置の使用時間が短いか正常に作動していないなどの原因が考えられる。

・遊離残留塩素を0.4mg/L以上1.0mg/L以下の範囲で維持するためには遊離残留塩素0.6mg/L以上の濃度で遊泳を開始する。

(2)pH値

pH値が適正範囲にないとき、目に対して痛みを与えます。
また、水が酸性に傾くと消毒効果は強くなるが、コンクリートの劣化や配管の腐食、浄化能力の低下をもたらし、逆にアルカリ性に傾くと消毒効果が低下します。

検査回数
※使用日の積算が30日以内ごとに1回
基準
5.8以上8.6以下であること。

事後措置

pH が基準から外れている場合は、補給水や pH 調整剤で pH 調整を行います。

なお、プール水の pH 値に最も影響を与えるのは、使用する塩素剤の種類である。
例えば、 次亜塩素酸ナトリウム液(液体無機系)はアルカリ性、次亜塩素酸カルシウム(固形無機系) 及びジクロロイソシアヌル酸(固形有機系)は中性、トリクロロイソシアヌル酸(固形有機系)は酸性を示すことから、使用する塩素剤の特徴を踏まえ、適切に pH を管理する必要があります。

    pH中和方法例

  • ・pHが高い時:硫酸水素ナトリウムで中和
  • ・pHが低い時:炭酸ナトリウムで中和

(3)大腸菌・一般細菌

水の生物学的な汚染の指標として有効な検査項目です。
特に大腸菌は、入泳者がもち込んだ糞便による汚染の指標となります。

検査回数
使用日の積算が30日以内ごとに1回
基準
大腸菌 検出されないこと。
一般細菌 1 mL 中 200 コロニー以下であること。

事後措置

・塩素消毒を強化すること。

・大腸菌が検出された場合はプールの使用を中止し、遊離残留塩素の濃度を 2 ~ 3 mg/L 程度に上げて循環ろ過装置を運転しながら塩素消毒を強化する。
その後、0.4 mg/L 以上 1.0 mg/L 以下の遊離残留塩素が確認できてから大腸菌の再検査を行い、大腸菌が検出されないことを確認できた場合にプールの再開を認める。

(4)その他水質

※プール水を1週間に1回以上全換水する場合は、検査を省略することができます。

検査項目 有機物等
(過マンガン酸カリウム消費量)
検査回数 使用日の積算が30日以内ごとに1回
基準 12mg/L以下であること。
検査項目 濁度
検査回数 使用日の積算が30日以内ごとに1回
基準 2度以下であること。
検査項目 総トリハロメタン
検査回数 使用期間中の適切な時期に1回以上
基準 0.2mg/L以下であることが望ましい
検査項目 循環ろ過装置の処理水
検査回数 1回
基準 循環ろ過装置の出口における濁度は、0.5度以下であること。
また、0.1度以下であることが望ましい。

施設・設備の衛生状態

(5)プール本体の衛生状況等

プール本体は、定期的に清掃が行われ、常に清潔に保たれている必要があります。

プールの水位や水温を一定に保つために、水位調整槽(バランシングタンク)や還水槽を設けた場合、槽内にヌメリ(有機物の膜)が生じることがあります。

このヌメリの中はレジオネラ属菌繁殖の温床となることが考えられるため、ヌメリを清掃により除去する必要があります。

検査回数
1回
基準
(ア)プール水は、定期的に全換水するとともに、清掃が行われていること。
(イ) 水位調整槽又は還水槽を設ける場合は、点検及び清掃を定期的に行うこと。
(6)浄化設備及びその管理状況

浄化設備は、プール水の衛生状態を良好に維持するため、適宜運転し、ろ材の洗浄、交換を随時行う必要があります。

オゾン処理設備は、プール水中の有機物等様々な汚染物質をオゾンにより酸化分解し、水質浄化を図るものであり、紫外線処理装置は、プール水中の微量有機物、特に結合残留塩素の分解を目的とした水質浄化のための設備です。

オゾン及び紫外線処理は消毒効果はありますが、その持続性がないことから、プールでは浄化装置として用いられています。

オゾンガス及び紫外線は、有害であることから、これらの設備を設ける場合には、児童生徒等がこれらに暴露されることのないよう、安全面にも十分配慮した構造でなければなりません。

検査回数
1回
基準
(ア)循環浄化式の場合は、ろ材の種類、ろ過装置の容量及びその運転時間が、プール容積及び利用者数に比して十分であり、その管理が確実に行われていること。
(イ)オゾン処理設備又は紫外線処理設備を設ける場合は、その管理が確実に行われていること。
(7)消毒設備及びその管理状況

塩素剤は、次亜塩素酸ナトリウム液、次亜塩素酸カルシウム、塩素化イソシアヌル酸のいずれかを使用します。

塩素剤の注入は、連続注入式であることが望ましいですが、連続注入式でない場合も、遊離残留塩素濃度を均一に維持する必要があります。

プール水の残留塩素濃度は均一に維持されているか。
検査回数
1回
基準
(ア)塩素剤の種類は、次亜塩素酸ナトリウム液、次亜塩素酸カルシウム又は 塩素化イソシアヌル酸のいずれかであること。
(イ)塩素剤の注入が連続注入式である場合は、その管理が確実に行われていること。
塩素剤の使用方法は安全かつ適切であるか

    取扱い

  • ・塩素剤が目、鼻、口などに入らないように注意し、また、高濃度の塩素剤溶液を取り扱う場合には、ゴーグルやゴム手袋等を使用する。
  • ・衣類などに付着した場合は、速やかに多量の水で洗い流す。

    保管

  • ・湿度の低い場所に保管する。
  • ・高温や直射日光の当たる場所を避ける。
  • ・酸や油脂類、布類等の可燃物と接触させないように保管する。
  • ・塩素剤が効期限内であれば適切に保管し、翌シーズンの最初に使うようにする。
  • ・換気の良い場所に保管する。
  • ・種類の異なる塩素剤を保管する場合は、ラベルを使用する等区別がつくようにし、十分に離して保管する。
(8) 屋内プール
検査項目 空気中の二酸化炭素
検査回数 1回
基準 1500 ppm 以下が望ましい。
検査項目 空気中の塩素ガス
検査回数 1回
基準 0.5 ppm 以下が望ましい。
検査項目 水平面照度
検査回数 1回
基準 200 lx 以上が望ましい。