近頃、「働き方改革」という言葉をニュース等で聞かない日はありません。この動きに合わせて、社内で働き方を見直すことになった企業様も少なくないはずです。そうした企業様の中には、「働き方改革=残業を減らす取り組み」といったイメージがあるかもしれません。しかし実際には、もっと幅広い分野への取り組みが必要です。
労働法に詳しい社労士に相談することが働き方改革実現の近道です!
2015年10月に一億総活躍国民会議が開かれ、2016年6月にはニッポン一億総活躍プランが発表されました。そして2017年10月に政府は新たな政策の目玉(新・三本の矢)として、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」を掲げ、政府を挙げて取り組んでいくことを発表しました。これら政策は「一億総活躍社会」を実現するにあたって必要不可欠であり、働き方改革は重要な取り組みの1つとして位置付けられています。
働き方改革実現会議において決定した「働き方改革実行計画」には以下の9つのテーマが策定されています。
働き方改革実現会議9つのテーマ
政府は働き方改革のポイントを「働く人により良い将来の展望を持ってもらうこと」だと述べています。
同一労働同一賃金により非正規労働者の待遇が改善されれば若い労働者が明るい希望を持てるようになり、格差の是正で中間層が増加することで、より多くの消費が生まれ、家庭を持つ人も増えて出生率上昇にもつながります。また、長時間労働が是正されれば、ワークライフバランス改善で女性や高齢者が仕事に就きやすくなり、自ずと労働生産性は向上していきます。
さまざまな社会問題の解決のために、働き方改革が最良の手段だと考えられているのです。
日本の労働環境には、昨今話題になっている長時間労働、「正規・非正規」という2つの働き方の不合理な処遇の差、子育てや介護との両立、副業・兼業など働き方の多様化など様々な課題があることに加え、労働生産性の向上を阻む多くの問題が存在します。
労働人口の減少
人口減少社会に突入した日本では、それに伴い、労働力人口の減少が問題になっています。日本の人口推計をみる限り、今後も人口減少が大幅に改善することは見込まれず、労働力人口を確保するためにはさらなる「働き方改革」が必要です。長時間労働
日本では欧州諸国と比較して労働時間が長く、長時間労働や仕事上のストレスにより自殺・死亡する労働者が増え続けています。労働基準法では、使用者は1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないと定めていますが、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を結び、特別条項を付記すると事実上、無制限に働かせることができてしまいます。少子高齢化
日本は世界でも長寿国であることが有名です。65歳以上の人口比率は増え続け、2013年の高齢者の割合は総人口の25.1% で4人に1人ですが、2060年には総人口の40%となり、2.5人に1人が高齢者となることが予測されています。これに対して、出生率は減少を続けており、2060年には合計特殊出生率は、1.35にまで減少することが見込まれています。労働生産性
労働者1人あたりで生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したものを「労働生産性」といいます。 日本の日本の名目労働生産性は、OECD 加盟 35 カ国中 22 位で、加盟国平均を下回っており、先進7カ国(G7)では最下位となっています。これまでの日本では、「労働時間を増やして頑張れば頑張るほど企業の業績が向上する」と信じられ、長時間労働をすれば「頑張っている」と認められる文化がありましたが、働き方改革では、「長時間労働の是正」のためには、まずは「労働生産性の向上」が必要だと考えられています。企業が今すぐ取り組むべき主要テーマには以下のものがあります。
同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
現在の日本では、同じような仕事をしているにも関わらず、非正規労働者の賃金は、正規労働者の6割程度と賃金格差が発生しています。同一の仕事内容には正規・非正規の違いによる処遇格差を是正していく、逆に、処遇格差を残すならば、仕事内容を明確に区分していく、という2つの方向性が考えられます。労働生産性向上・長時間労働の是正
「長時間労働は減ったが、同時に業績も下がった・・・」ということでは、継続性に問題が発生します。企業業績を維持・改善しつつ、長時間労働の是正を実現するには、社員の労働生産性向上が不可欠です。柔軟かつ多様な働き方
在宅勤務やモバイルワーク、兼業や副業、時差勤務といった勤務制度に加え、勤務地や職務を限定した「多様な正社員」制度などを検討することになります。ただしこれらの制度は、導入後に運用・改善を重ねることで、自社の業種や組織特性に適合させていくことが重要です。セキュリティや生産性とのバランスも図る必要があります。高齢者の就業促進
65歳までの雇用義務化に加え、寿命100年社会が言われる昨今、生涯現役を掲げる会社も注目を集めるようになりました。これからは、法対応を主眼とした「守りの再雇用制度」から、対象者の意欲や能力に応じて最大限の組織貢献を果たしてもらう「攻めの再雇用制度」が必要です。子育て・介護と仕事の両立
休業期間の延長や多様な就業時間や就業スタイルの選択など、法定を上回る育児・介護支援施策を検討します。 また制度整備だけでなく、対象者に心理的負担を与えないの組織風土や職場環境の整備も重要です。現状を知る
まず、会社や組織の何が問題なのか、現状の問題をしっかりと把握する必要があります。
厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では現状の働き方・休み方を「見える化」する自己診断サイトを提供していますのでぜひ活用してみてください。
厚生労働省:働き方・休み方改善ポータルサイト
http://work-holiday.mhlw.go.jp/
考える
現状分析を行ったら、次は具体的にどうありたいのか、そのための施策をどのように実行すべきかを考え、対応計画を策定していきます。
行動する
具体的な行動としては、ソフト面(企業風土・組織文化改革、マネジメント変革、従業員意識改革・人材育成、ヘルスケアなど)とハード面(制度改革、ルール策定、業務変革、IT導入、設備・環境整備)の両軸でアプローチしていくことが重要です。